大学AO入試

2006年。3月の終わりごろ。

私はようやく自作アニメーションのソフトを起動した。

今までずっと使えなくて放置していたソフト・・・。使い方が書かれた本はどこの書店にも売ってなく中身も見る機会もなくわたしはアマゾンのネット通販で注文した。

しかし、その参考書は基本的な操作はまったく載っていなく、本来のソフト性能のみの解説で実際にアニメについては一つもかかれていなかった。

でも、基本的な操作の理解のためにわたしはその本を一文字残さず読みつくす。意味のない文字なんてないと信じて、

本を片手にソフトをいじりようやく完成させたのは第一シーン、4枚のえがスクロールするだけのたった10秒のシーンの製作に5時間もかかってしまった。

元々、ソフトの事をまるで理解していなかったということもあるだろうこのことで私はアニメ製作についての疑問をおぼえた。

大変だ。めんどくさい。手間がかかる。

これが当時の本音でまるで手を出すきにもなれず、1週間ずっとその状態で放置してしまった。

しかし、それでも時間がたってもう一度作りたいという衝動に駆られる。

ロゴを作ろう、どんなのがいい?

適当にフォトショでロゴを打ってフォントきめて、大きさをきめて、適当にふちを取って立体的に見せて・・・。

目立つような色を使い、丁寧にロゴを完成させる。背景なる素材を拝借して。

本を片手にエフェクトを設定し、第2シーンを8時間で完成させた。

予想以上の長時間の作業にわたしは肩はこの上なく疲れ、痛みでうごきもしない。

じじくさいとおもいつつ当然のことと受け入れてその数日後、わたしは始めてアニメーションの1コマ目の絵を描き始める。

歩くシーン。

放映されているアニメーションは一歩に約10枚の絵が入っている。でも私にはそんなに細かく書ける技術はない。

半分の5枚にしよう。

まず棒立ちの絵を鉛筆でかいて、形を整えて、線がまっすぐになったらもう一枚の絵を重ねてペン要れにはいる。

夢中になって絵を描き続けた結果、2時間程で絵は全部完成した。

しかし、絵を取り込んでまず線だけ起こす作業に自分の肩は悲鳴をあげる。4枚書き終わった時点で眼が酷く疲れ眠気は限界に差し掛かっていた。

それでも作業を続けてようやく動かすシーンに差し掛かる。線だけ起こしてる分調整がしやすく1時間で全部の絵のキーフレームを設定できた。早速再生してみたときに私は絶句する。 

・・・動いてない。

理由は誤差によるわずかな線のズレ。これのせいで止まっているはずのものが、まるで別のものにでも変わったようにスライドショーと化していた。

大急ぎでフォトショを再起動しながら頭の中で錯誤する。

どうする? うごいてない。でも線をあわせるにもあわせてもまったくおんなじ絵には出来はしない。

ご飯とお風呂をはさみ必死で考えた。それでも答えはみつからずその日を終えて、私はまた学校へと向かった。

登校中の自転車に乗っていてもそればかりかんがえて、何度かふら付いたのも自業自得だろう。

授業もまったく手付かずで考えて出した結論は――・・・。

動かない部分は一枚のレイヤーで固定すればいい。

なぜこんな簡単なこと思いつかなかったのかと自分自身に叱咤をいれて、帰宅して早速作業にとりかかる。

固定される部分の絵はいらない。

一枚一枚に修正をくわえていると時間はまたもあっという間にすぎて、再生される頃にはもう夜中の1時を回っていた。

でも、その成果はあった。

動いた。

まだぎこちないけれど、ようやく私の思い通りのシーンが完成する。

うれしかった、只それだけ。

友達に見せても苦笑いされるだけで先生に見せても素だったけれど、あの時は私の第一歩だったんだろうと思う。

そこからはじまって第4シーンの静止画を全部書き終えて、もっとも手間のかかる”なびき”の作業を始める。

人物は2人、なびくべき場所は4つ、4つのうち1つづつに絵を七枚描くのに、私は一週間もかかってしまった。

また動画にするためには、夜寝るときめている1時を通り越す3時まで起きて毎日その終わらない作業に明け暮れる。

またこのときからPCのスペックの低さにあえぎ始めた。

約60枚のレイヤーが同時に表示されること。

さすがに、父の自作してくれたPCであっても起動しただけで1Gはスペックの必要なソフトで最大画質の絵を表示することははやり尋常ではない。

突然画面が落ちて再起動してしまった。このことで私の約3時間分の作業が水の泡となってきえていった。

次のシーンに移ったとき、私は大学のオープンキャンパスの資料に眼を向ける。先生から紹介してもらった大学の資料。

ここがいいかなぁ。とおもって呼んでいるとAO入試部門に自作品を提出する項目をみつけた。

使用ソフトの面をみて自分の製作ソフトが乗っている事に気づき、私はゆっくりと大学について考えるようになった。

なびきのシーンが終わって、次からは静止画が多く絵を描くことにも慣れてきた私は、9シーンまではサクサクと作業を進める。

そして、第2の関門”ふりむき”に指しかかろうとしていた。

なびきのシーンから振り向きに移る。

いつもどおり一枚一枚絵を描いて居るときに私は自分自身の画力のなさに喘いだ。

斜めの顔の角度がおかしい。美人なひとが不細工にみえる。

屈辱だった。

もっとデッサン力があれば、もっと技術があれば・・・。

その不安は全身にかけめぐってわたしの鉛筆を足止めした。それでも絵を描いて約14枚のペン入れの絵を完成させる。

早速取り込んでから方向キーで動くかどうかの確認をしたとき、私はため息をつく。

スライドショーだ。

最後のコマがまるで髪の毛が伸びたようにズレてしまっていて、色を塗る前にやり直しを要求された。

まるで約束をすっぽかされた気分だった。

だるい足で本を重ねた足で立つ、ガラズの作業台に下から蛍光灯を照らしてもう一度絵を書き直し、さらにぎこちなかった部分にもう一枚絵を足した。

2日かけた原画作業が終わりを迎えて次の日に早速色塗りに入る。5枚いろを塗った時点で私は大きくため息をついた。

こんなもの、完成するんだろうか・・・。

時期は7月の終わり、夏休みの序盤が終える頃といったところだろう。

全22シーン中、現在10シーン目。

まにあうか・・・?

重くのしかかってくる不安。親はまったく勉強していない私みてすごく不安がっている。

こんなの作ってる暇があるなら、英語を勉強したほうがいいのではないか。
得意科目の数学はこの前赤点だった。
構内模試は1年のときよりも学年順位が50位以上も落ちた。

不安が駆け巡る。

浪人したらどうしよう。バイトなんてしたことない。専門学校でもいかせてもらえるのか?

心配性で考え込む私の性格。

でもそれを支えてくれたのは幼稚園からの親友。

アニメシーンが完成するたびに私は彼女の元へと行った。彼女が唯一私のアニメをほめてくれる人だったから。

「すごい。」といわれるたびに私は強い快感を覚える。

アニメをつくって褒めて人が居る。自分の絵をみてくれて楽しんでくれてる。

一日たってようやく辛かった振り向きのシーンが完成した。このシーンが完成したことで私は大きく前進したきがして、その日から早速音楽のサビのシーンへと移った。

サビの第一シーン目は波乱万丈だった。

足りると思っていた絵が足りず、大急ぎで動画のシーンを足す。

ややこしい部分は凝らず簡潔に済ませて、わたしはテンポに乗るようにどんどん作業をつづけた。

サビの2シーン目に差し掛かったとき、父が私の部屋にくる。机に向かって絵を描いている私を見て、父は一言そう述べた。

「あそんでばっかりやったら食べていけないぞ。」

一瞬、あっけに取られた。

遊んでる? 

わたしが? 

アニメ作ってるよ。 

大学入試のために、わたしの夢のためにつくってるんだよ。

そう一言のこしてリビングへ戻る父を追い、私は今までアニメ製作にまったく無関心だった親に私は目に涙を溜めて怒鳴った。

何も知らないくせに!!

アレだけ作るのにどれだけ・・・

取って付けたように褒める親、さすがに泣いてくるとは思わなかったらしく素直に謝ってきた。

それでも気が済まずリビングで大声を出して泣きじゃくり。私は逃げるように自室へと戻る。

目からあふれだす水滴に、絵がぬれてしまわぬよう。枕で頬をこすった。

次の日からは普通に作業をはじめる。サビのキメの部分がPCのスペック的につらかったが、ここも何とかクリアだ。

そう、ふと気が付けばもう終わりのイントロに差し掛かっている。

さいごのなびきはいちぢるしく失敗してしまったが、願書提出日の9月1日に間に合わないため、目をつぶって最後のシーンを作り始める。

そこで感じた大失策は、

コンテが抜けてる。

ありえなかった。1年かけて完成させた構成がまさかずれているとは思っても見なかった。

でもありえないことがそこにあった。

最後の関門:かんがえろ。

どうする? 今から考える? まにあうか? いや、むしろ切り取れば・・・

提出日まで残り2週間。

考えていては間に合わない。切り取るしかない、でも始めに試したそれはエコーが上手くかかっていて切り取るに切り取れなかった。

どうあがいても不自然になる。

どうする? 

約3日間考え続けて私は歌手の声と声との間を切り取る事にした。

コンマ1秒が響くこの作業。

5時間以上時間をかけて完成したそれは、ぎこちない部分はあっても絵を見てくればきっと築かないであろうと思われる程度に抑えられた。

それでようやく。私は最後のシーンへとペンを走らせる。

丁寧に、ゆっくり、最後の絵を取り込み、色を塗り、重ねて、思ったよりあっけなく、わたしの待ち望んだアニメが完成した。

ため息がおちる。

テロップを適当につくり、生成して、1週間ほど修正に時間をかけて。

わたしの1分30秒のアニメが完成した。

できた。

このアニメ製作で私はいろいろと成長した気がします。それもいろんな意味で。

今ここで書いた部分のほかに。携帯に迷惑メールやら学校でいじめに近い行為をうけたりしてました。

それでも私は結構一生懸命だったのかもしれませんヽ(´ー`)ノ

ぶっちゃけまじでかんせいするとはおもってなかtt(マテ

このアニメを完成することができたのも、きっといろんな人の支えがあったからだと思います。

正直に「うごいてる。」という一言を言われる度にで1シーンつづ作っていけたんだろうなぁとも考えましたw

今私はここに協力してくださった方や愚痴を聞いてくださった方にお礼申し上げます。

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